前回の続きです(内定式でWell-Beingのことを話しました 第1回感謝の気持ちを大切にする)。10月1日内定式でWell-Beingについて話したことに関連して、Well-Beingな状態を実現するための4つの留意点についての話です。
前回は注意点のひとつ目「感謝の気持ちを大切にする」でしたが、続いて今回はふたつ目の「自分の強みを発揮させる」についてです。
内定式で伝えたかったこと
内定式は10月1日でしたからちょうど全国の緊急事態宣言とまん延防止措置が解除された初日でした。
ワクチン接種が広がった効果か、東京を始めとする各地の新規陽性者数もだいぶ減少してきました。内定者の大学4年生も最後の半年は行動規制を解いて本来の学生生活を送ることができそうなところにきています。
だから卒業までの最後の半年は、思い出に残るよう豊かで充実した日々を送って欲しいとの気持ちを込めてWell-Beingの話をしました。
ポジティブ心理学でいうWell-Beingを実現するために
Well-Beingは米国人・マーティン・セリグマン博士が提唱するポジティブ心理学における言葉で「幸せ」を意味します。
同じ幸せでもHappinessは旅行に行ったり遊んだりお金儲けに成功したりするような一時的、刹那的な幸せと定義しています。
それに対しWell-Beingは幸福感に包まれながら毎日を過ごす、生きることを意味しています。
この状態を実現するために日常の仕事や生活に役立てるには次の4点に留意することが大切。
- 感謝の気持ちを大切にする
- 自分の強みを発揮させる
- ネガティブな思想を否定しない
- 楽観主義の思想を持つ
今回は「❷自分の強みを発揮させる」について少しお話ししたいと思います。
自分の強みを発揮させる
自分の苦手なことに取り組んで弱みを克服することが不要とまでは言いません。
でもたいていの場合は強いところを存分に発揮して仕事や生活をして行くほうが幸福度が向上します。実はそのほうが周りの人にとってもありがたいものです。
これは本などでもよくいわれていることですね。
自分自身を振り返っても思い当たることはたくさんあります。
仕事の面で言えば、着想は必ずしも悪くないとは思うのですが丁寧に最後までやり切ることが苦手です。飽きっぽいとも言えます。
また仕事の質に対して拘りが強く必要以上に丁寧に進めることでやたら時間がかかったりもします。
幸い自分の性質について客観的に見る機会があり、自分の強みは発想、着想にあると認識することができました。
そこで新しいことを始めるときにはアイデア出しとスタートのところを自分でやってその後はメンバーにやってもらうようにしたところ、チームにとってもすごく仕事が良く回るようになりました。
学生はこれから卵を割って外界に出てくる段階
だから内定者の学生には次のように話しました。
皆さんはビジネスの世界で言えばようやくこれから卵を割って外の世界に出てくるヒヨコの段階。
強みはこれからいくらでも開発できる。
その点では大学最後の半年間を大切にしてほしい。
ビジネストレーナーとしておそらく日本で一二を争うほどの有名人、朝倉千恵子さんはご自身のvoicyで大学生活の過ごしかた次第で社会人として圧倒的な差をつけてスタートできるとおっしゃっています。
自分は何がやりたいのか、何になりたいのか
よく「自分が何をやりたいのか、将来何になりたいのかがわからない」と悩む学生がいます。
それはあたりまえです。
「やりたいこと」というものはやってみないと見つからないもの。
やってみて面白かったら「ああ、これがオレのやりたいことだったのだ」と分かる。
やってみて面白くなかったら「これは自分のやりたいことではない」と分かる。
だから経験の浅いうちはなかなかやりたいことなんて見つかりません。
あれこれ経験を積んでいくうちに自分の向き不向きも分かるし、その結果自分のやりたいことが見つかるもの。
僕自身「この仕事が自分の天職だ」と見つかったのは50歳のときです(さすがに遅いか?!)。
だとすればまだ仕事についてもいない学生時代にやっておかなければならないことはただひとつ。
自分の可能性をできるだけ高めておく、広げておくことです。
しっかり勉強し、自分の強みを増やしておくことです。
自分の可能性を広げるために、学生のうちに学んでおく
勉強とは本を読むことだけではありません(もちろん本を読むことはとてもよい勉強なのでこれはやったほうがよい)。旅行に行く、映画を見る、美術館巡りをする、音楽を聞く、人と会う(それも普段接しないジャンルの人と会ったほうが勉強になります)などなど、どれも勉強です。
大学でも授業で勉強したり試験勉強などしているでしょうけれど、それだけでなく自ら学びたいことを決めて勉強することが大切です。
社会人として仕事を始めると多くの場合は忙しい毎日を送ることになります。
残業することもあるし出張に出かけることもあります。
自分で学びたいと思ってもついつい忙しさにかまけてしまい勉強せずに日々が過ぎていく。
だからこそ学生のうちに学んでおくことが重要なのです。
そして学生のうちに自分で学びたいことを決めて勉強することを始めておけば、社会人になってからも学び続けられる可能性が高まります。
学び続けている社会人のなんと少ないことか
社会人になると多くの人は一日仕事をして家に帰ると疲れてバタンキュー。または晩ご飯食べてテレビ見て風呂入って寝る生活になります。
あるいは仲間と酒飲んで帰ってやはりバタンキュー。
とても勉強なんてできません。せいぜい会社の用意した研修プログラムに参加するくらいです。
よく引き合いに出されるデータで日本のサラリーマンの平均読書時間は「1週間に6分」というものがあります(出典「平成28年社会生活基本調査結果」総務省統計局)。
たった6分と思いますが、これは平均値のマジックによるものでさらに分析すると驚くべきことがわかります。
ビジネスパーソンの1週間の読書時間
n=18,740人(15才以上)
その内有職者(「家事や通学のかたわらに仕事」をしている人を除く)=8,892人 のデータを抜粋
ビジネスパーソン全体の読書時間 | 読書時間0分でない人 | 0分でない人の読書時間 |
6分 | 6.1% | 99分 |
上の表で示した通りビジネスパーソン全体の読書時間は週平均で6分ですが、実は本を読まない人(つまり0分の人)が圧倒的に多く9割以上を占めます。
(100%ー6.1%=93.9%)
一方で本を読んでいる6.1%の人が1週間にどれだけ読んでいるかといえば99分です。
平均6分というのは0分の人が多いから出てくる数字で、実態は読書する人としない人では読書時間がここまで違うのです(99分が多いかどうかも議論がありそうですが)。
総務省の統計には読書だけでなく色々な生活時間についてのデータが掲載されています。
その中で「学習・自己啓発・訓練(学業以外)」のデータを見てみましょう。
ビジネスパーソンの1週間の勉強時間(学習・自己啓発・訓練(学業以外)
n=18,740人(15才以上)
その内有職者(「家事や通学のかたわらに仕事」をしている人を除く)=8,892人 のデータを抜粋
ビジネスパーソン全体の勉強時間 | 勉強時間0分でない人 | 0分でない人の勉強時間 |
3分 | 2.1% | 160分 |
読書時間よりさらに顕著な結果となりました。
こちらも勉強をまったくしない人が98%を占めており、勉強している2%の人だけを抜き出すと平均160分となります。
こう見てくると、社会人の大半は読書もしないし勉強もしていない、ごく一部の人が読書と勉強にそれなりの時間を割いていることが浮き出てきます。
朝倉千恵子さんが大学生活の過ごしかた次第で社会人として圧倒的な差をつけてスタートできるとおっしゃっているのはおそらくこの点です。
学生時代に学びの習慣がなければ社会人になってから勉強をしない9割以上の多数派に属することになる。
学生時代に学びの習慣をつけておけば社会人になっても学び続けられる可能性が高まる。
そういう人は数%しかいないので自ずと圧倒的な差をつけることにつながるのでしょう。
Well-Being
学生時代の時間があるうちに「自ら学びたいことを決めて学ぶ」習慣をつけておく。
そうすれば社会人の忙しい毎日の中でも時間をひねり出して学びを続けることができる。
それが自分の強みの開発につながります。
企業で実務をしていく中でもこの仕事は僕の、私の強みを発揮できたり好きだと思えたりする仕事に早く出会えることでしょう。
そして「自分の強みを発揮させる」ことができれば当然にPERMAのP、Positive Emotion(ポジティブ感情)が高まります。
E、Engagement(物事への積極的な関わり、またはフロー状態を生み出す活動への従事)も高まります。誰でも得意なこと、好きなことには時間を忘れて集中するものです。
R、Relationship(関係性)についても自分の強いエリアでは周囲を積極的にサポートすることができますし場合によってはチームを引っ張ることだってできます。
逆に弱いところは他の人に任せる、頼んだらいいのです。
そうして周りの人たちとの関係性もより良くなっていくでしょう
また強みを発揮できる仕事に携わっていれば、M、Meaning and Purpose(人生の意味や仕事の意義、及び目的の追求)についてもプラス感情を得られる可能性も高まりそうですね。
最後のA、Accomplishment(何かを成し遂げること)は言わずもがな。強みを発揮すれば間違いなくAも高まります。
自分の強みを発揮させれば幸せ(Well-Being)な毎日を送ることができます。
自分の強みを開発するには学ぶしかありません。
内定者には学ぶ習慣を身につけて大学を卒業してほしいと思います。
エピローグ
ということで残り半年の学生生活でしっかり勉強してねと言いたかったのですが、時間の関係もあり上で述べたほど丁寧に説明できませんでした。
ちゃんと伝わったかな。
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