予算会議を会社の成長につなげるために|綱引き、交渉の場から脱皮する

プロローグ

今回は予算編成について書きます。

どちらかといえば伝統的なスタイルの企業向けの話で、「あるある」と感じる人もいることと思います。

また反対にいわゆるスタートアップ企業のように事業を勢いよく成長させていく段階の人にとっては、「へぇ、こんなことをしている会社もあるんだ」と驚く内容かも知れません。

目次

古い会社にありがちな2種類の予算会議

それでは一つひとつ説明していきましょう。

伝統的な会社(言い換えると古い、歴史のある会社)にありがちな2種類の予算会議スタイルを示します。

  • 現場が作った予算に経営陣が一方的に数字を上乗せする
  • 予算は必達、未達に終わるとボーナス査定にひびく

それぞれについて以下に説明します。

現場が作った予算に経営陣が一方的に数字を上乗せする

現場が作った予算に対して「これでは数字が足りない」からと上層部でどんどん上乗せをしていく。

現場からすれば「足下の状況から考えると頑張ったってこの線がいいところだろう」と考えて予算を作っています。これは理解できるところです。

一方経営陣は「なぜ前年比マイナスの予算を作るんだ」「ネガティブ要素ばかり参入して新しく伸ばしていく計画を入れていない」「(上場企業の場合は特に)こんな数字で投資家やメディアに公表する訳にはいかない」などの気持ちを持っています。これも経営の立場を踏まえれば理解できます。

しかもお互いに相手の考えていることは想像できています。毎年繰り返してきているのですから当然です。

その結果、現場は始めから「どうせこの数字では通らない」と思っているし、予算会議が終わると「また今年も数字を乗せられた」程度の感想しか持ちません。

その結果、新しい年度が始まったときには(3月決算の企業の場合は4月です)、早くも現場の人たちは「今年も予算未達だな」とあきらめの表情でのスタートとなります。

これではよい結果につながりませんね。

予算は必達のこと|未達に終わるとボーナス査定にひびく

次にこんな会社もあります。

「予算は会社に対する約束、コミットメントだ、政治家でいえば公約だ、だから予算は必達が当たり前、達成しなければいけないものだ。」

これは最初のケースの会社に比べてだいぶ厳しい。どうせ上乗せさせられるんだからとの気持ちからいい加減に予算を考えるわけには行きません。なぜなら達成度合いによってボーナスが決まるわけですから。

30年前、「海外の企業は(当時は海外といえば米国を中心とする欧米企業でした)、1年のうちで一番時間をかけて議論するのは予算編成のとき」とよく言われたものです。
彼らは予算達成度合いでボーナスや昇進が決まるのでマネージメントから「この数字でやれ」と言われても納得できなければYESと言わないのだ、契約社会だから、と言う話を聞いたものです。

だから議論に議論を重ねて上積みできる余地を考え計画に盛り込もうとする。ただし根拠なく数字を積み上げるような無責任なことは引き受けない。
数字を達成するために必要なタスクは何か、考えられるリスクをどうヘッジするのか等々について徹底的に議論する。

このようなプロセスで予算を編成するので、お互いが納得できる予算ができ上がるとあとはそれを実行するだけとなり、ほとんどその年の実績が仕上がったも同然と言うわけです。

これは本来の予算会議の進め方ともいえます。

ただ日本人は議論が下手なので、もっといえば議論を好まないので、結局マネージメント層から「つべこべ言わずに言うことを聞け」のように突きつけられてしまうと、現場は従わざるを得なくなるものです。

その結果、現場としては予算会議の前に「さらに数字を積み上げさせられても達成可能な数字になるように」考え、また「これ以上数字を詰めない合理的な理由」を準備するようになります。

予算会議の場が、より高い予算を組ませようとする経営側とより低い数字で済ませようとする現場側の綱引き、交渉の場になるのです。

経営側から上積みしろと言われて無責任に数字を作るよりはよいとはいえ、決して建設的な予算会議とはいえません。

会社の成長に向かって挑戦する計画を議論するのが予算会議

では建設的な予算会議とはどのようなものをいうのでしょうか。
継続的な成長をとげている企業ではどのような議論がなされているのでしょうか。

いわゆるスタートアップ企業が予算編成で経営者と社員が綱引きしたり交渉したりしているとは思えません。
米国GAFAの人たちがそんな予算会議に時間を費やしていたらあれほどの急成長などとてもできなかったろうと思います。

おそらく彼らは新年度の数字をコミットするより、会社の成長のために今年は「何をやるのか」に主眼を置いた議論をしているのではないかと想像しています。
前回までに申し上げたように「結果よりもプロセス」に重きをおいた話をしているのではないでしょうか。

もっといえば議論もそんなにしていないのかも知れません。議論はそこそこにとにかく動いてみる、それでうまくいかなかったら修正する、あるいは引き上げる、そんな前提で会社を回しているようにも思います。

ここで考えたいのは、どちらのやり方が楽しいのか、面白いのか、との点です。
達成確実な数字を計上するとか達成不能な数字を上乗せするとか、そんな議論が面白いわけがありません。

今年はこんな新しいことをやっていきたい、あんな挑戦をしてみたい、このような議論をする方がはるかに楽しいし、会社にとっても個人の成長にとってとっても有意義なことと思います。

今年の予算会議の主題を結果コミットからプロセスへのコミットに変えていきます

上で記載したことを理由として、ぼくたちの会社の予算会議のスタイルを一変しようと考えています。

具体的にはこんな風にしていきます。

  1. 売上げ、利益の予算数字説明(前年比較を中心に)
  2. 今年の成長予算を編成するために昨年1年間でやろうと(準備しようと)してきた課題をリストで示してそれぞれの進捗状況を報告する
  3. ❷でやり残したことなど来年の予算数字達成のためにこれからやるべきことをリストアップして説明する。
  4. 再来年以降の成長のために来年やっておきたいことをリストアップして説明する

❶にはせいぜい5〜10分程度しか時間を割きません。
議論の中心は❷〜❹。ここについて徹底的に考えを戦わせようと思っています。

もしかしたら❷についてはあまり項目が出てこないかも知れません。ホントなら10〜20個はリストアップできていなければいけないところで、そこができなければそもそも成長予算なんて組めるわけがない。だったら今回は❹もしっかりと議論してすべきことを決めていこうね、ということです。

ここをしっかり詰めておけば、きっと結果もついてくるものと考えています。

今回の予算編成はトライアルの一面があります。このやりかたがうまく機能するかどうかはまだわかりません。また一年後にはその方法に合わせてボーナス査定基準も変える必要があるでしょう。

まとめ

今回は、予算会議も結果数字の議論からプロセスの議論へ、来年度にすべきことは何かを議論の中心に据えてやったほうが楽しいし、きっとよい結果も伴うだろうとの話でした。

このトライアルがどのような結果を生み出すのか、とても楽しみです。

エピローグ

昨今「働き方改革」などといわれていますが、これは何も労働時間や働く場所に限った話ではありません。働く内容そのものを変えていかないと、先進国の間で生産性のいちばん低い日本企業の評判から脱することはできないでしょう。

年明けに米アップル社の時価総額が3兆ドルを超えて日本・東証一部企業の時価総額合計の約半分に達したとのニュースが駆け巡りました。なにより1兆ドルから2兆ドルに1年、2兆ドルから3兆ドルに1年4ヶ月しかかかっていないそうです。

このニュースに日本の企業家やビジネスマンたちが「自分たちも負けていられない、やってやるぞ」という気持ちになったらいいな、ぼく自身も頑張っていこうと思っています。

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この記事を書いた人

山田文彦
 株式会社クレハトレーディング代表取締役社長
 社員の力をどうやって高めていくか? これが毎日考えているテーマ
 日本一の会社にしたいと真面目に考えています

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