10月1日は内定式でした。
僕の勤務先は小さな会社なので内定者は3人だけですが、会社側は役員が出席してzoomで行いました。
内定式で話したことを以下に記録しておきます。
日本一の会社にする
内定式での挨拶の主題はWell-Beingです。
ちょうど前日に東洋経済新報社のWebセミナーでユニリーバ・ジャパン取締役の島田由香さんの講演を聞いたこともあり、またようやくコロナ禍からの脱出が見えそうになってきたタイミングで学生最後の半年間を大切に過ごしてほしいとの意図を込めて話しました。
要旨は以下の通りです。
私はこの会社を日本一の会社にしたい。
日本一とは何を指しているかといえば、日本一幸せなメンバーが働く会社にしたい。
では「日本一幸せ」な状態とは何か。
ここでいう幸せとは英語でWell-Beingと言われるもので、幸福感に包まれながら毎日を過ごす、生きること。
Well-Beingはマーティン・セリグマン博士が提唱するポジティブ心理学の言葉。
セリグマン博士は、人間が持続的に心理的に繁栄していく状態をフラリッシュ(Flourish)と呼び、このような状態になるための5つの要素がPERMA。
PERMAは、Positive Emotion(ポジティブ感情)Engagement(物事への積極的な関わり、またはフロー状態を生み出す活動への従事、フロー状態とは物事に集中、没頭している状態)、Relationship(関係性)、Meaning and Purpose(人生の意味や仕事の意義、及び目的の追求)、Accomplishment(何かを成し遂げること)の頭文字をつなげた言葉。
このポジティブ心理学を日常の仕事や生活に役立てるには次の4点に留意することが大切。
- 感謝の気持ちを大切にする
- 自分の強みを発揮させる
- ネガティブな思想を否定しない
- 楽観主義の思想を持つ
いよいよコロナが下火になってきた。
大学卒業までの日々を豊かで充実した半年にする、一生の思い出になるように過ごすために、ここで申し上げたことを意識していくといいよ。
中でも特に言いたかったのは4つの留意点です。
感謝の気持ちを大切にする
ありがとうを言うのはなかなか難しい
世の中のお母さんには、我が子を他のことはともかく挨拶やありがとうだけはきちんと言えるようにと教育されているかたが多いですね。
「感謝を表す。」とても大切なことだし、ともすればいい加減にしてしまいがちなことでもあります。
僕自身も昔は家人に対して「ありがとう」をあまり言っていませんでした。
しかしある日台所の洗い物だったか洗濯物干しだったか忘れましたが、その手のことをやったときに一言もありがとうと言われなかったことに腹が立ったことがありました。
そのときにはたと「よく考えたら僕自身も普段ありがとうと言っていないな」と気がついたのです。
以来夕飯を作ってくれたことに「ありがとう」、車の運転を代わってくれたことに「ありがとう」など感謝の言葉を極力口に出すようにしています。それでも時々は忘れてしまうのですが。
会社の事務所には毎日夕方に清掃が入るのですが、その人たちにも「いつもありがとうございます」と言うようにしています。
つい忘れてしまうのが会社のメンバーが僕の指示した仕事を仕上げてくれたとき。気をつけてはいるのですが忙しかったりするとすぐに忘れます。実行率は50%くらいでしょうか。
ありがとうが習慣になると小さな感謝に目を向けるようになる
前回書いたように、僕は「感謝のホワイトブック」というFacebookグループ(管理人:くっきー(久木田裕常)さん)に参加しています。これは1日の終わりに3つの感謝をアップするものなのですが、夜になると結構忘れてしまうので、昼間「あっこれ感謝のできごとだ」と感じた都度iPhoneにメモをするように努めています(これ自体もよく忘れていますが)。
このグループに参加しているおかげで小さな感謝に目が行くようになってきた気がします。
たとえば犬の散歩をしていると微笑みかけて下さったり、電車から降りるときに先を譲ってくださったり・・(電車で先を譲ってくださるのは、気がつかないほどの微妙な動きでしたが普段から小さな感謝に目を向ける習慣があるのでわかったのだと思います)
母が入っている老人施設の職員さんたちがまた素晴らしいのです。
毎週洗濯物を取りに行き交換にこちらからは洗った服を渡してくるのですが、そのときに「ありがとうございます」と言われるのです。もちろん僕も言いますよ。洗濯物をとってきて渡してくださるわけですから当然お礼を言いますが、そのときに向こうもお礼を言ってくれるのです。
そればかりではありません。面会に行くときも「ありがとうございます。」まるでうちの施設に入っている人のためにわざわざ面会に来てくれてありがとうという感じです。逆じゃね?
ありがとうが増えると自分の周りに支えてくれている人が多いことに気づく
ありがとうを言う、小さな感謝に目を向ける、これらが習慣になると周りの人の言動に感謝できることがすごくたくさんあることに気づきます。
たった1日を過ごすだけで夥しい数の感謝に溢れていることを知り驚きます。
そうすると自分の中で変化が起きます。
どういう変化でしょうか。
それは自分がひとりで生きていないことを思い知らされるのです。
言葉を変えていうと、いかに多くの人が自分を支えてくれているかがわかるのです。
これこそ感謝です。自分の生活空間、人間関係、もっと言えば社会に対して心の底から感謝の気持ちが漲ってきます。
ありがとうございます。
感謝の気持ちを大切にするとPERMAが高まる
上で述べたように「感謝の気持ちを大切にする」とPERMAのP、Positive Emotion(ポジティブ感情)が高まります。
誰しも「ありがとう」を言うことでネガティブな気持ちになる人はおりますまい。小さな感謝を見落とさないように努めることがそもそも前向きな気持ちといえます。
E、Engagement(物事への積極的な関わり、またはフロー状態を生み出す活動への従事)も高まります。感謝を表すことはその相手に積極的に関わることにほかなりません。
またこれは面白い発見ですが、夜に1日を振り返ってメモをみたりしながら今日の感謝を思い起こす作業はまさにフロー状態、その作業に没頭、没入している状態です。
おそらくポジティブな出来事を思い出そうとすることはとても幸せな気持ちになることなので自然と集中していくのだろうと思います。
R、Relationship(関係性)については言うまでもありませんね。
以前に大きな道路を渡るときの話です。歩行者用信号が青になって大勢の人が一斉に渡り出す中でひとりだけぽつんと動かない女性がいました。
そのかたは白い杖を持っていらしたので、ああそうか青になったことがわからないのだな(確かメロディのならない信号でした)と思い「青になりましたよ」と声を掛けたことがあります。
その女性は「どうもありがとうございました」と丁寧にお礼を伝えてくださりました。
そして関わったついでと思いどこに向かっているかを尋ねたら最寄りのとある地下鉄駅でしかも行先方面も僕とダブっていたので僕の右腕をつかんでもらって道路を渡り、駅まで歩き、エスカレーター、改札を通り抜けて地下鉄に乗るまで一緒に行きました。
その間色々なことを話しました。僕などは娘ののことまで話したほどです。普通見ず知らずの赤の他人に家族の話などしません。
でも彼女の「ありがとう」を起点にとても心地よい人間関係が構築されたのだと思います。
僕のほうが先に地下鉄から降りることになったのですが、夢中で話す僕に向かって「着きましたよ」と教えてくださったほどでした。
同時にこの体験は、M、Meaning and Purpose(人生の意味や仕事の意義、及び目的の追求)についてもプラス感情を得られました。人のために何かをするのは人生にとって大切なことだとあらためて感じましたから。
最後のA、Accomplishment(何かを成し遂げること)には「感謝の気持ちを大切にする」ことが直接関わることは今のところありませんが、今後何かの気づきが生まれるかも知れません。
学生たちには感受性豊かな今だからこそ伝えたい
話を内定式に戻します。
学生たちは感性の豊かな年代です。
社会に出て揉まれているうちにいつの間にか世間ずれもするし自分の心に向き合う時間などどんどん少なくなっていくものです。
だからこそ卒業までの半年間、毎日の小さなことにも感謝し自分が幸せな環境に生きていることに気づいて欲しいと思います。
エピローグ
もっとも内定式ではここまで細かな説明はしていません。
僕は毎晩3つの感謝を思い出して書き出してるよ、と話しただけです。
聞いてくれた学生たちが、それを実践して同じような気づきを得てくれたら嬉しいことです。
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