最近社員のひとりが新しくこんな取り組みを始めたいとの提案をしてきました。役員や部長クラスで話を聞いたのですが・・・
社員から新しい仕事提案を聞いたときの反応は
その提案内容は顧客企業に対してあるサービスの提供を始めたいというもので、これまで会社でまったくやっていなかった類いの仕事内容。だからお客さんに喜ばれるかどうかも実はよくわからない。そこでまずはトライアルで始めることとして対価は求めずに少数の顧客に対してスタートさせたい、それでお客さんの反応が良ければ有償サービスとして正式に始めたいとうものでした。
この提案内容に対する反応が興味深かったので少し考察してみたいと思います。
実は僕自身はその社員からこの話をさわりだけ聞いていたので、本人からの説明のあとで「これを始める狙い、ゴールはどこにおいているのか」の質問をしました。これは応援質問のようなもので初めて聞く人たちに彼の考えていることを理解しやすくするためのものでした。予想通り彼からは顧客との関係性を強固にすることが狙いでそれにより先々のビジネスを盤石なものにしていくと説明がありました。
しかしその後の展開は、「それを始めるとなると会社の定款変更が必要となるかも知れない。そのためには株主総会の承認が必要となる」「それをやったときにどのようなリスクが考えられるのか」「その業務にどのくらいの工数が必要となるのか。今の陣容でやり切れるのか」「これによって売上げや利益はどの程度計算できるのか、企画倒れで収益に繋がらない可能性が高いのではないか」などの質問連発となったのです。
簡単にまとめると、そのサービスの狙いの妥当性とその狙い・ゴールはこのアイデアがどのようなプロセスを経て実現できるのかなど、アイデアの本質に関わる話に至らず、リスクや収益性などの周辺の議論に終わってしまいました。結論としては「まあ無償でスモールスタートするなら営業部内で検討していけばよい、有償で本格的にやっていこうとなったときに会社としての決断を議論しよう」と引き取って打ち合わせは終了しました。
知らない世界に飛び込むことは怖い
このやり取りでの学びは以下のようなことです。
人間というものは自分の知らない世界に飛び込むことはとても怖い。その怖さの感情が知らない世界に挑戦することの難しさを生み出す。結局のところある程度知識を得ている世界でしか挑戦はできないものではないか、という点。
これは決して自分の経験値の中でしか挑戦できない、とか自身が見聞きした世界や業界の中でしか挑戦できない、ということではありません。
僕も今回の提案内容について自分でやったことはないし、周囲で同じようなことをして成功した(あるいは失敗した)事例を見聞きしているわけではありません。ただ本件がたまたまこれまでに学んだり情報収集したりして得た知見を応用できる案件だったのです。具体的にいうと藤村正宏さんの「エクスペリエンス・マーケティング」の著作を読んだりセミナーを受講したり、鴨頭嘉人さんのVOICYや西野亮廣さんのオンラインサロンなどで得た知識があったので、その知識をフル動員して一旦抽象化した上で今回の提案ケースに当てはめ、どんな風にプロジェクトが動いていくのかを想像することができました。その結果うまくいけばこんなことまで期待できそう、うまくいかなかった場合でこのくらいのマイナスを被るかなくらいの大雑把なあたりをつけることはできました。まあその想定が当たるかどうかは分かりませんが、少なくとも「怖さ」を感じることはありませんでした。
知識がないとこのような想像力が働かないので「怖い」感情だけが浮かんでくるのではないかなと思います。そのような状態で議論を進めても本質の討議には近づかない、心配な点の披露競争のようなネガティブ議論が続くだけと思ったので途中で引き取ってミーティングを終えました。部内でスモールスタートして結果を(うまくいってもいかなくてもよいので)目に見える形にしないと議論が進まないだろうと考えたわけです。
今回はたまたま僕が分かる話だっただけのことで、他の場面では僕が知識不足から怖がる側に回ってネガティブに考えてしまうことだってあります。
今回得た教訓は、「人間、自分の知らないこと、まったく知識のない分野では挑戦できない」ということでした。やはり勉強することは大切ですね。
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