誰かがこれをやってみたいとアイデアを出したときに「そんなこと無理」と言ったことはありませんか?
どんなことが「無理」でどんなことが「できる」のか。
前回、それについて「信じられる」「信じられない」の観点から書いてみました。
ではなぜ「無理」と思うのか?なぜ「できると信じられない」のかについて今回考えてみたいと思います。ちょっと抽象的な話が続きますがお付き合いいただけるとありがたいです。
「信じられる」と「信じられない」を分ける3つの要素
前回「『信じる』と『信じない』の境目とは?」で、できると信じられるか信じられないかを分ける代表的な3つの要素について書きました。
- 学校で習ったこと(権威者の発言)は信じるけれど習っていないことは信じない
- みんなが言っていることは信じるけれど少数派の話は信じない
- 自分で経験したことは信じられるけれど見たことも聞いたこともない話は信じない
このうち、1.と2.はよく盲信などと言われます。自分で検証することなく頭から信じてしまうわけですね。
タチが悪いのは3. です。1. 2. と違って自分の実体験が伴っていますからある意味エビデンスがある。こうしたらうまくいった、こうしたらダメだったという因果関係が成立しているように思えるのです。
「信じられない」を検証する
しかし「うまくいった事実」「うまくいかなかった事実」についてその要因は当然ひとつではありません。つまり「こうしたら」は要因のワンオブゼムというわけです。
前回例に出した昔バリバリの営業マンだった上司からのこうしたらうまくいくとのアドバイスについていうと、「こうしたら」は本当はひとつではないはずです。当然営業相手によっても変わるし競争関係でも変化する。ありとあらゆる環境がすべて同じに揃わなければ結果は変わって当然です。
それなのにひとつの「こうしたら」だけに着目してしまい、それとは別のアプローチをしようとするアイデアに対してはうまくいくとは「信じられない」と思ってしまうのです。
これなどは少し丁寧に論理的に考えたら誰でも気づく話のはずですが実際会社では似たようなことがしょっちゅう起きています。
いかに人が「ひとつの事象」だけに着目しがちかがわかります。
反対に部下が持ってきたアイデアに「俺も昔似たようなことをやったけどうまくいかなかった。だからやめておいたほうがいい」とのアドバイスも実は環境が変わればうまくいくなどということはよく聞く話です。
時代に比べて先に進みすぎていたというようなケースもこれですね。
入手した情報は必ず裏を取れ、とは記者の「基本のキ」と思いますが、上記1. 〜3. について要因となるファクト(事実)をよく見つめて因果関係を考察することが大切です。
それは自分自身の経験についてさえも一歩引いて客観的に見る目を持たなければならないということです。
とはいえ「これをやったらダメ」というのも存在する
先に「うまくいった」要因は環境のすべてにある、すべてが再現できなければうまくいくとは限らないと書きました。
「逆にうまくいかなかった」要因も同様と書きましたが、「うまくいった」ことに比べると「うまくいかなかった」要因はより明確になりやすいように思います。
言い換えると「うまくいった」要因がひとつに絞られることはまずないのに対して、他のことはすべて上手に段取りしてこなしたとしても「これをやったらおしまいだ」という失敗要因は特定しやすいように思うのです。
たとえばスペックの高い製品を競争力のある価格で提供し、アフターサービスも充実させていたとしても営業マンが面談にいつも遅刻して信用されなければ終わりみたいな話ですね。
だから経験の引き出しを増やすには「うまくいかなかった」経験のほうがいいよ、成功体験をいくら積んでも引き出しを増やすことにつながりにくいよ、と社内でもよく話しています。
そして「うまくいかなかった」経験をたくさん積んでおけば、つまり「これをやったらうまくいかない」引き出しを多く持っていれば、それさえやらなければうまくいく確率がどんどん上がっていくわけです。ここは大事なポイントだと思っています。
結局最後は「妄想力」の大きさと「ダメでもともと」の考え方が挑戦につながる
そうだとすると何か新しいことに挑戦したいときに「これだけはやっちゃダメ」を数多く手元に持っていればうまくいく確率が上がる。周りの人はうまくいくわけないと言ってきても、いやいやそれはあなたが見えていないだけと思える。
それでもそう簡単に成功するものではありませんが、「やりたい気持ち」が大きければ多少の失敗で諦めることなく修正しながら進んでいくことができる。
やはり最後は「やりたい気持ち」の大きさ、すなわち「妄想力」に尽きるのかなと感じるわけです。
もうひとつ大切なことはたとえ「うまくいかなくても引き出しを増やすことができる。ダメでもともと」と考えることが前進させる力になるのだと思います。
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