プロローグ
フリーランスを育てる活動をされているしゅうへいさんが最近voicyやセミナーの中でしきりにゴール(結果)よりもプロセスに関心を持とうとの話をされています。
まさにその通り、御意!!と思います。
しゅうへいさんの言は、フリーランスで何百万円稼いでいるような先達者の結果だけ見てああなりたいとか私にもなれるだろうかと考えているのではダメ、そこに至るプロセスに注目しないとね、という意味合いです。
会社での仕事についても同じことが言えます。どこそこの得意先にこれだけの売上げ、利益を作る、という結果目標を置くだけではダメで、そのために何をするのか、そのプロセスを十分に計画、検討しなければならないのです。
でも会社で営業パーソンと話していると相変わらず「営業は結果がすべて」との話が幅をきかせています。
一面でその考え方は正しい。営業は(経営者と置き換えてもよいですね)「売ってなんぼ、儲けてなんぼ」で評価されるとの点では結果がすべてと言えます。
ただ「結果を出すためには」の視点に立つと、ただ「結果を出せ」、「結果を出そう」だけでは結果はついてこないものです。
今回はプロセスを見なければいけない理由をあらためて考えてみたいと思います。
プロセスの計画検討に十分時間をかけないと「頑張る」しかなくなる
たとえば「売上げ1億円」を目標において、さあここに向かって営業していくぞ、となったときに明日は早速何をしますか?
当然、1億円を売り上げるために何をしていくのか、具体的な課題に落とし込む必要がありますね。
それがプロセスの検討です。ここをしっかりやらないと「1億円の売上げに向かって頑張ります」しか出てきません。それでは1億円の売上げはできっこありませんね。
以下にプロセスをしっかり見ることによりもたらされる4つの効能を掲げます。
- 目指す姿を視覚化しないとすぐ行動できない
- 結果が出なかったときこそプロセスを丁寧に振り返ることが大切
- プロセスを見ていれば「これをやったらダメ」がわかってくる
- 結果を求めるとヒャクゼロ(100-0)のどちらか。プロセスなら「ここまではできた」がある
それでは一つひとつ見ていきましょう。
目指す姿を視覚化しないとすぐ行動できない
人が行動するには具体的な動きかたを目に見える形でゴールにおく必要があります。
ここで誤解されやすいのは、売上げ目標とか利益目標を数字で掲げることが視覚化とは言わない点です。
前項で述べたように「売上げ1億円」の目標だけで即行動に移すことができないのは、1億円って目に見えないからです。1万円札を1万枚積み上げれば1億円だから目に見えるだろうというかも知れませんが、それは目に見えない1億円を便宜上お札を使ってわかりやすく示しているだけです。
「目に見える」というのはたとえば「お客さんのところに行って困っていることを聞き出してくる」のようなことです。
これは映画のワンシーンのように自分がお客さんのところに行って話している光景が目に浮かびますね。これが視覚化です。
キャンプ用品メーカーのスノーピークは「直営店の店長のボーナス査定はその店の売上げでは決めない。キャンプサイトに行ってチラシを◯◯百枚配るという目標に対してできたかできなかったで決める」のだそうです。
会長の山井太さんが社長時代の昔におっしゃっていたことです。確かにこれならすぐ行動に移す事のできる目標です。
(同時にチラシを◯◯百枚配ればこれこれの売上げが上がるものとデータ化しているところがスノーピークの凄さでもあります)
このように「なすべきことを目に見える形で表す。」そうしないとすぐに行動できません。
結果が出なかったときこそプロセスを丁寧に振り返ることが大切
結果が出なかったとき、うまくいかなかったときには、プロセスのどこがまずかったのか、あのときどう判断すればよかったのかなどを丁寧に振り返ることが大切です。
振り返りがないと、今回のうまくいかなかった挑戦から何も学ばないことになるからです。
最近のトレンドとして「挑戦」「チャレンジ」などとよく言われます。ぼく自身も会社で「新しいトライはうまくいかなくてあたり前」「それでも勇気をもって一歩を踏み出せ」とよく言っています。
新しいことに挑戦すれば十中八九はうまくいかないものです。だからといって挑戦をやめてしまったら何も生み出せないわけですから、「ダメでもともと」の気持ちで次々にトライすることは必要です。
ただそれと振り返り、反省をしなくていいこととは別です。
結果がうまくいってもいかなくても、その要因はプロセスにあるのです。
だから取り組んだ内容について時系列に振り返っていく、その中でプロセスのどこにうまくいくかいかないかの分かれ目があったのかを探っていく。
ここをおざなりにして「メンバーにやり遂げようとする意識が足りなかったから」みたいなまとめをすると次回の対策は「気合を入れる」になってしまいます(笑)
もちろんどんなプロセスをたどってもうまくいきようがない、初めから極めて成功確率の低いプロジェクトもあることでしょう。でもその場合なら「なぜこのプロジェクトを強行したのか」を振り返る必要はありますね。
それが「うまくいかなくてもともと。取り組むことによる経験値を積めればよいと判断」したのであればOKかも知れません。
いずれにしてもプロセスを振り返ることなしに「あ〜あ、うまくいかなかったな。また次回頑張ろう」では何も学びが残りませんね。
プロセスを見ていれば「これをやったらダメ」がわかってくる
そうやってうまくいった経験、うまくいかなかった体験を積み上げていくと、「これをやったらダメ」が見えてきます。
不思議なことに「これをやったらうまくいく」はあまりないのですが、「これをやったらダメ」は割合はっきりとわかってきます。
うまくいった経験をもう一度再現するには事業環境、顧客、競合社の状況等ありとあらゆる条件が揃わなければなりません。現実にそんなことはまずありません。
だからうまくいった経験をそのまま引き出しにしまっても次回にはなかなか使えないのです。
ベテラン社員の「俺が担当のときは……」で始める経験談があまり役に立たないのはこういうわけです。
一方でどんな事業環境でも「これだけはやってはダメ」というのは存在します。
たとえば撤退戦略をちゃんと決めていなかったために不都合が生じているのにずるずると取り組みを継続して怪我を大きくしてしまった、などはたいていのケースで生きる経験です。
結果しか見ていないと反省が生きません。
結果管理では人は育たない
結果が出なかった人に対して叱ったところで次にうまくできるわけではありません。
「うまくできた人を見習え」と言ったところで、結果を真似することはできません。
でもプロセスを真似ることはできます。
「人は失敗経験から学び、成功体験により成長する」ものです。
そしてその成功体験について、「どういうプロセスを踏んだらこの結果が出た」のか、その因果関係を頭の中で整理できていると次の挑戦ができるのです。
その繰り返しが成長につながるものだと考えています。
結果を求めるとヒャクゼロ(100-0)のどちらか。プロセスなら「ここまではできた」がある
最後にもうひとつ、うまくいくかいかないかを数えるとはっきりしますが、たいていの人はうまくいかない数のほうがはるかに多い。
そのときに「あ〜あ、またダメだった」しか残らないと精神的につらいものです。
でもプロセスを細かく計画していれば、たとえ結果は伴わなくても「ここまではできた」があるはずです。
サッカーでいえば、ドリブルで一人抜き二人抜いて、三人目に挑んだところでボールを取られてしまってゴールに結び付けられなかった。そんなときに二人までは抜けた。次はそのタイミングでもっといいポジションの仲間にパスしようと気がつけばいい。
ゴールは挙げられなかったけれども小さな成功体験を味わえたことが次への挑戦につながるのです。
本田宗一郎
本田宗一郎さんはレースに臨むにあたって社内でこう言っていたそうです。
ただ勝てばいいんじゃない。勝ったら勝ったで、負けたら負けたで、何がよかったか、わるかったか、その原因を追究する。レースは興行じゃないし、われわれは技術屋ですからね。
マシンを見てると、いろんなことがわかります。あのカーブを切るには、ああやれば、こうすればと……。そして、次のマシンのことを考える。こう考えてやれば、もっととばしてくれる、などど。次の製作過程へ自然に入っているんです。それが技術屋なんですよ。
本田さんの言っていることは技術屋に限らず営業部門だろうがアドミ部門だろうがあらゆる仕事人にとって不変の真理だと思います。
まとめ
以上申し上げたことをまとめます。
仕事は結果だけを見るのではなく、プロセスを丁寧に見ていくことが大切です。
なぜなら、
- 目指す姿を視覚化しないとすぐ行動できない
- 結果が出なかったときこそプロセスを丁寧に振り返ることが大切
- 結果管理では人は育たない
- 結果を求めるとヒャクゼロ(100-0)のどちらか。プロセスなら「ここまではできた」がある
エピローグ
「営業は結果がすべて」と考えている方々へ
確かにボーナス評価はそれでよいかも知れません。
でも会社が、社員が成長していくのにそれではまったく不足しています。「よい結果はよいプロセスから生まれる」ものです。もしヘタレなプロセスからよい結果が出せたとしたら、それは単なるラッキーパンチ。はじめからそこを狙いに行ってはいけませんね。
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