前々回、前回とラグビー・イングランド代表監督のエディ・ジョーンズさん流の選手育成について書きました。そこから、会社における人材育成について考えてみました。自分自身の会社員としての40年近くを振り返ると、色々な方々に教わり、育てて頂いたことにあらためて感謝の気持ちが湧き起こります。その中で、あるかたに言われた言葉を取り上げてみたいと思います。
学校と会社の決定的な違い
実は、これから申し上げる話は、私自身に対して言われた言葉ではありません。私の上司が、学校を卒業して入社したばかりの新入社員に対して話した訓話の中に出てきた言葉です。
あなたたちは早く仕事を覚えて一人前になりたいと思っていることだろう。上司や先輩から教わったことをしっかり自分のものとして会社に貢献したいと思っていることだろう。
しかし、いいか、よく聞け。これまであなたたちが過ごしてきた学校、すなわち小学校から大学に至るまでの学校と会社には決定的な違いがある。
学校は、あなたたちの家庭が授業料を支払い、教師があなたたちを教え、導いてくれた。
会社は違う。会社のほうからあなたたちに給料の形で支払っている。
これは決定的な違いであり、その違いの意味するところをしっかりと考えてもらいたい。
こんな言葉が話の始まりだったと思います。そして続いて・・。
会社の上司・先輩は親切ではない?
学校の教師は、生徒から(正確には生徒の家庭から。国や自治体からというケースもあります)お金をもらって教えている。だから先生はみんな親切だ。生徒から何も訊かなくてもちゃんと教えてくれる。どこまで理解したかなというようなことにも意識を向けてしっかり教えてくれる。それが学校だ。
でも会社は違う。会社はお金を払う側なのだから、あなたたちの職場には、あなたたちが黙っていても教えてくれるほど親切な人はいない。
でも、そこまで不親切でもない
おっと!!そんな冷たいところなのか、会社というものは・・・。と新入社員たちの表情が緊張します。そしてそれに続くのが・・。
でも、あなたたちがわからないところを尋ねているのに教えてくれない、そこまで不親切な人もいないのが会社だ。
だから、わからないことがあったら、訊きなさい。ひとりで悩んだりせずに訊きに行きなさい。そうすれば何でも教えてくれる。そのかわり訊きにいくことをためらっていると永遠にわからないままだ。
わからないところを訊きに行く姿勢が大切
新入社員の特権は「どんな初歩的なことでも質問できること」
当時の私の上司が新入社員にしていたときに、私は会議室の後ろの方で聞いていました。おーっ、そうか!確かにその通りだ、とひとりで合点していたことを思い出します。
わからないことを躊躇せずに訊きに行ける力、姿勢は大事ですね。まだそんなことを訊いてくるのかと言われやしないかと思って動けないと結局仕事が遅れる、または間違うことに繋がります。もちろん次の段階としては、まず自分で考えてからこれでよいかどうか訊きにいくなどの上級者編もありますが、新入社員はまずは訊くでよい。
新入社員のうちは初歩的なことを尋ねても許してもらえる空気もありますしね。
学校教育でもここは大事だと思う
社会人の第一歩を踏み出すにあたって、なんでもわからないことを尋ねていけることが大事だとしたら、今の学校ではそういうことをちゃんと教えているのでしょうか。
よく日本の学校は質問が少ないと話題になります。欧米だと教師が「質問のある人」というと次々に手を上げる。僕は海外留学の経験がありませんが、映画を見ていてもそんなシーンが多いように思います。
僕自身の学生時代を思い起こすと、それこそ小学校から大学まで、質問する力を養った記憶はありません。その逆に先生に教わったことをひとりで一生懸命理解しようとすることが基本だったように思います。
今の学校教育は変わってきたのでしょうかね。
でも会社に入ってくる若い人たちを見ていると、会議で質問する人は極めて少ないし、まあこれは若い人に限りませんが、その会議体の参加メンバーの中で役職が上の人しか質問しないようなケースが多いと感じています。うちの会社だけのことかな?
申し上げてたいのは、学校教育でもし質問する力を伸ばすということにあまり関心が払われていないとすれば、ぜひそこはあらためて欲しいなということです。質問する姿勢を身につけるといった方が正確な言い方かもしれません。
社会人として活躍していくために必要な素養の第一だと思います。
コメント